『風の歌を聴け』を読んで

羊をめぐる冒険』に続き村上春樹さんの『風の歌を聴け』をやっと読み終わりました。
読書はときどき不安な気持ちになったり、青春のほろにがさを思い出したりと、明るく軽い気持ちになることばかりでは、すまないところがありますね。この作品でも、何かつかみ所のないような、せつないような空気を感じます。
中心となっているのは、主人公が大学生の夏休みに過ごした、故郷での18日間に起ったできごとだったように思います。
羊をめぐる冒険』にも登場した“鼠”さん、ジェイズ・バーのジェイ、店で偶然出会った女性の間での話と共に、いろいろな話題も組み合わさっていて、ひと息に読むことができました。
その中で、ひとつですが印象深かった事を書いてみます。
村上さん自身とても影響を受けた作家として、デレク・ハートフィールドさんのことをこの本の中で何度か書いておられます。(私は名前をはじめて聞きました。)
ハートフィールドさんの作品『火星の井戸』のあらすじを紹介しておられ、その中で、ある一人の青年が 風とおしゃべりをしています。
>「私のことは気にしなくていい。ただの風さ。もし君がそう呼びたければ火星人と呼んでもいい。悪い響きじゃないよ。もっとも、言葉なんて私には意味はないがね。」
「でも、しゃべってる。」
「私が?しゃべってるのは君さ。私は君の心にヒントをあたえているだけだよ。」
・・・・・(P.122 より)

風の歌はここに書かれているように、わたしの心にヒントを与えてくれるものでしょうか。そう思うと、今、窓の外に吹いているピューピューという音も、親しみを持って聴こえてきます。

まだまだ、読みこなすところに至りませんが、覚え書きとして書いてみました。

風の歌を聴け (講談社文庫)

風の歌を聴け (講談社文庫)