「夏の闇」を読んで


夏の闇 (新潮文庫)

夏の闇 (新潮文庫)

 開高健さんの『夏の闇』がはじめてのかたに、本の背表紙に書いてありましたあらすじを少し書きますと、
ヴェトナム戦争で信ずべき自己を見失った主人公は、ただひたすら眠り、貪欲に食い、繰返し性に溺れる嫌悪の日々をおくる・・・・・が、ある朝、女と別れ、ヴェトナムの戦場に回帰する。

上のような内容の本です。じっくり読むような本ですので、まだ全部読んでいないのに、感想を書くのも無謀ではあるのですが、ふと書いてみたくなりましたので、まとめるのはあきらめて、感想のかけらを書いてみます。


 私は、開高健さんの本の読者としては新参者で、購入した本はまだわずかに3冊です。(『開口閉口』、『輝ける闇』、そしてこの本『夏の闇』)
 私の読書の世界はとても狭かったようで、巨匠と言われる方なのに、ちょっと前まで名前くらいしか知りませんでした。こうして、開高さんの本を読み始めてみると、味わい深く、だんだん興味の深さが増してきました。
 どこがそうさせるのか。
 それは、言葉が選びぬかれている感じがして、このような表現があるんだ・・・と、何度もかみしめたくなるような文章に出会えるのです。


 また、男女のちがいというか、人間そのものについても、いろいろ読みながら感慨に浸ります。 ここが一番と言うわけではありませんが、今ふと思い出す箇所で、こんな気になる文章もありました。少し引用します。
> 女はしのびよってくる黄昏のなかでサクランボを頬ばっては種子を吐きつつ、けわしい、鋭い、ひたすら嘲罵の口調で話しつづけた。蛇は一度頭をもたげたら必殺の打撃をあたえるべく一度体を躍らせるだけだと思うが、女は頭をもたげて体をゆらゆらさせ、つぎからつぎへと湧いてくる主題にとびついては噛みつき、とびついては噛みつき、噛みついてつぎの攻撃のために後退するたびに毒々しくなった。相手をたおすための毒が自身にまわっていくような気配を帯びてきた。・・・・・・(P.144)
 人間観察がすごい。読んでいると、そういわれるとそうかも・・・と思います。

 きょうは、ひとつだけにします。つづきはいつか書いて見たいと思います。

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 今朝は、本気で雨が降っています。雷も先ほどなっていました。夕方散歩の時に、どしゃぶりの雨でないことを願いつつ、いまはこのあたりで終わります。


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