冬山・『声をなくして』


山登りに備えて(予定はまだありませんが・・・)体力作りの為、毎日歩くことにします。と、言いながら、ひさしぶりに歩きました。
冬山に目が行きましたので、写真を1枚。


『声をなくして』

『AV女優』などの話題作を書かれた永沢光雄さんの、『声をなくして』をやっと読み終えました。


以前に、mmpoloさんや、横浜逍遥亭で、書いておられた作家の方の本です。
http://d.hatena.ne.jp/mmpolo/20061105
http://d.hatena.ne.jp/mmpolo/20070102/1167697759
http://d.hatena.ne.jp/taknakayama/20061217/p1


声をなくして

声をなくして

昨年11月1日、亡くなられたと知り、驚きました。まだお若いのに・・・。
はっきりとは覚えていないのですが、心のどこかに、『AV女優』の作品はよい印象が残っています。題名から予想していた雰囲気とは違っていました。図書館でちょっと立ち読みのはずが、そこのイスに座って、とうとうほとんど読んでしまいました。

永沢光雄さんは、43歳の時に、下咽頭ガンの手術で声を失ってしまわれました。
1年にわたり、闘病生活の日記を書いておられます。
どんなに苦しいかわからないほどなのに、全体のトーンは、じめじめせずに、書き進めておられます。さらっと書いておられるけれど、何度も、目をぬぐっては、読みました。こんな時、来客でもあったら、目を真っ赤にして、何事? と思われるでしょう。


 永沢さんの奥さんのことを、書いておられるところが、忘れられません。


>ドアを開け、机の前に座っている山城さんの目を見て、私はお辞儀をした。私に代わり、背後で妻が、「こんにちは!きょうもよろしくお願いします!」。精神科病棟にはまるで似つかわしくない元気で明るい声で挨拶した。病院のどの診察室も、妻と一緒に入ると、妻の挨拶で一瞬、そこは病院でなくなる。バーのドアを押したのか、と錯覚さえしてしまう。妻には言っていないが、正直言って嬉しい。そして、病院での、新宿1、2、3丁目の町角で知人と会った時の−ホームレスの方にも・・・(略)・・・クリーニング屋や酒屋に入る時の妻の背の伸びた
「こんにちは!」の天に届くような挨拶は、私のひそかな自慢だ。私に声があった頃から、そうだった。妻には言ってないけど。  (P.80,P.81)


男の人には、こんな所もあるのかな?それとも永沢さんに・・・
すばらしい奥様ですね。


また、お友達のことを書いておられるところ。
>けれどもな、Kよ。自慢することではないが、そんな、サハラ砂漠(行ったことはないけれども)に化した体と頭でも、幾つかは仕事をしたんだぜ。その原稿のコピーを送るよ。いつだったか僕の本が出た時、僕が君にそれを送らなかったら、君、凄く怒ったことがあったじゃないか。あの時は正直に、てめえの本を親しい友、君に送りつけるなんて迷惑きわまりないと考えて送らなかったのだが・・・・君は怒鳴ったよな。
『これからは、お前の書いたものはすべて送れよ!』
と。                             (p.205)


なぜか、ここの所を読んでも、今、キーを打っていても、なみだに文字がかすみます。
あと、2冊は小説本を出したい。そう、何度も、言っておられる永沢さん。
どんなお気持だったかと、思うと・・・・また、友情にも、心が飛び・・・。


あとがきの最後の言葉、忘れないようにしたいと思います。
>私は、言う。ちゃんと言う!
みんな、死ぬな!


心に残る本となりました。