『アンジェラの灰』を見て


 昨日は『アンジェラの灰』という映画のビデオ鑑賞をしました。なぜこの映画をと言いますと、本当はドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」の映画を見たくてレンタルビデオショップに出向いたのですがこれが見つからず、それではと辺りを見ていて見つけた『アンジェラの灰』を借りて帰ったことからです。


 この『アンジェラの灰』と言う映画、どこかでよい映画だと聞いたような気がしまして、ちょっと手にとって見ました。
1930〜40年頃のアイルランドを舞台にした、極貧で悲惨な生活を送ったある少年の記録とあり、極貧の中を生きながらもどこか希望を失わない子供たちの姿が見るものを惹きつける・・・そのままではありませんがこんな説明書きがありました。
 私のアイルランドについて知っている事と言えば、以前見たアイリッシュダンスのショー『リバーダンス』、癒しの歌声で有名なエンヤ、ニュースで時々聞く北アイルランド問題、マイケル・コリンズの映画とか、ケルト音楽、・・・・すぐに思い出せるのはこのくらいです。


 映画を見る心準備はそんな感じで、あまりありませんでしたが、話を映画に戻します。
これほどの貧しさがかつてのアイルランドにあったのだろうか、・・・父親は仕事がなく収入がない、母は家族を守る為には辱もしのび、路地に落ちている石炭を拾い集めたり、教会で司祭の食べ残しを物乞いまでする。こんな情景がつぎつぎに描き出されます。子供たちの表情を見ると、真に迫っていて、とてもつらくなるのですが、舞台となっている、リムリックの町の風景(川や橋)や、雨に濡れた石畳の通りなど、情緒溢れる素敵な音楽と共に流れると、さっきまで見ていた貧しさは追いやられて、映画独特の豊かな世界に入り込みます。でも次の瞬間には、失業、飲んだくれのお父さんの姿、差別に苦しむさまに、変わるのですが。


 その中で、感動した言葉がありました。
「どんなに貧しくても靴がぼろぼろでも 君たちの心は宝物」・・・このセリフは輝いていました。
靴に穴が空いても新しい靴を買ってもらえず、父が自転車の古タイヤで直してくれた靴をはいて学校に行くと、クラスメートには、からかわれ、いじめられるが、決してくじけない主人公と弟。また、病気になって入院した病院では、お風呂やトイレで涙ぐましいまで熱心にシェイクスピアを読みふけり、退院後には、すばらしい出来の作文を書いて学校の先生を驚かす。と言う場面の後にありました。


 また、こんな場面も心に残りました。お酒に溺れて、生活費までもお酒ににつぎ込んでしまう父、どうしようもない親なのですが、主人公のフランクは、連れ戻しに行った先のパブで、独り酔っ払って悲しそうに歌を歌っている父の姿を見ると、面白い話を聞かせてくれた父との楽しい思い出がよみがえってきて声もかけず家へ帰ってくる。その後、家族のもとを去る父に、「お父さん、愛しているよ。」と、声をかけたいのにかけられなく、後姿を見送る場面などです。


 見終わってみると、厳しい生活の記録のようでもあり、軽い気持ちでは見れませんが、最後の方は希望の光も見えてきて、見ごたえのある映画だと思いました。ブログに書こうかと調べていましたら、この映画はピュリッツァー賞を受賞し、大ベストセラーとなった「アンジェラの灰」の映画化されたものでした。

きょうは、めずらしく映画の感想でした。