講演カセットを聞く


小林秀雄さんの本を読んでいましたら、その中に菊池寛さんは講演会などお話がうまい。・・・そんな事を書いておられました。どうしたら、講演でうまく話せるでしょう。と菊地さんに尋ねるとこんなお話をされたそうです。
講演会場に行き、菊地さんが入り口から壇上につくまでに、お客さん(聴衆)の笑い声が大きければ、今日のお客さんは菊地さんの事をよく知っている人が多い。すでに好感をもって受け入れていると、ちょっとした、菊地さんの動作などによっても自然と笑い声もでるのだそうです。
その声が小さい時は、自分の事をお客さんはあまり知らないと言うわけで、そうなると壇上に行くまでに話の内容を変えるのだそうです。いろいろな話題で脈絡がなくてもかまわずぽんぽんとつなげる、・・・と。
(手元に本がなく、確かな表現でないかもしれませんので、うのみにはしないで読んでください。)
なるほど、とうなずきました。たとえばですが、ファンであるとかその講演者の人の知識をたっぷりもっていれば、ささいなしぐさひとつでも、思わず笑い声となって、歓迎の気持ちが現れるでしょう。そういうことでしょうか。


先日、小林秀雄さんの講演会のカセットを聞きました。学生対象に「文学の雑感」と言うタイトルでのお話でした。(新潮カセット文庫)
本居宣長の研究をしておられるころだったのでしょう、その中の話で印象に残ったことがありました。本居宣長さんは山桜をこよなく愛しておられたようで、遺言として、「自分のお墓には山桜を植えてくれ。」と、言われたそうです。小林さんも、山桜のほうをさかんに褒めておられました。
わたしは絵を描くようになってはじめて山桜をまじまじと見ました。
山桜は花と葉がほとんど同時に開き、ソメイヨシノは花が咲いた後から葉が出る、そんなちがいがあるようです。お恥ずかしいことに、そのことをこの年になって近頃はじめて知りました。
本居宣長と言う方、『古事記伝』を書かれた方、それ以上の知識がありませんでしたが、生きておられる間には古事記伝が出版されて収入となったわけではないそうです。35年間だったか仕事をしながらずっと古事記の研究を続けておられたとか、・・・カセットで小林さんのお話を聞きながら、あたりまえですが知らない事ばかりで、おもしろかったです。
きょうは、このあたりで。