カラマーゾフの兄弟(6)

第2部に入りました。長男ドミートリーと父フョードルの財産相続問題の話はそのままですが、第4編は『錯乱』という題になっていて、ドミートリーとイワン、そしてカテリーナの関係について焦点が当てられています。

カラマーゾフの兄弟2 (光文社古典新訳文庫)

カラマーゾフの兄弟2 (光文社古典新訳文庫)

次男イワンについては、訳者である亀山郁夫さんの読書ガイドの言葉を借りますと“日頃から独自の無神論を口にする、知性派”との紹介がありましたが(「カラマーゾフの兄弟2、P.471)
 知性派という所に私は良い印象をもっていたのですが、本文を読んでいると、アリョーシャがイワンより異母兄弟であるドミートリーのほうにより親しみを感じていたり、父フョードルもけんかをしているドミートリーよりイワンのほうに恐れの気持を持っていることが随所に現れます。たとえば、こんなセリフです。
 >「・・・(略)・・・イワンはチェルマシーに行こうとしない、なぜだ?スパイする必要があるからさ。グルーシェニカが来たとき、おれが大金を渡すんじゃないかとね。どいつもこいつも人でなしだ!そうさ、おれはイワンなんて、まるきり息子と認めちゃおらん。やつのことがまるきりわからない。・・・・・」(P.41)


イワンに与えられている物語の中での役割に、(私には)なぜが同情してしまう気持があります。読んでいくうちには変わるかもしれませんが。


カテリーナを愛しているイワンですが、そのカテリーナは本当は誰を愛しているのでしょう。屈辱を与え続けるドミートリーなのか、いつも好意を持って話を聞いてくれ、尊敬しているイワンなのかです。


『錯乱』とは、カテリーナがドミートリーから受けた屈辱を復讐していたいがために、兄弟であり、自分を愛してくれているイワンをそばにおいているんだ。と、イワンの口から告白される所でわかりました。
 >「・・・カテリーナさん、あなたがほんとうに愛していらっしゃるのは兄貴だけです。それも、屈辱が深くなればなるほど、ますますね。そこが、あなたの一種の錯乱でもあるんです。・・・・(略)」(P.91)


愛にはいろいろあるのでしょうが(簡単には説明できません)、この場面を想像して見るだけでも、深く神秘に満ちている気がしてきます。
先を読んでいないので、これからこの三人の関係がどうなっていくのか関心が高まります。
きょうは、第4編の1部の話にしぼって書きました。次回は第5編 プロとコントラ 、なかでも有名な『大審問官』です。じっくり読みたいと思います。