カラマーゾフの兄弟(5)

感想文を続けて書いていますが、ここまで読んでいて最初持っていた「テーマが重たくて気持が暗くなるのだろうか。」というのとは違い、深く人間の心や物事に目を向けられる有意義な読書の時間を持てる、今はそう思うようになりました。

カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)

カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)

それはさておき、きょうは第3編 女好きな男ども のあたりを書いてみます。
女好き、というのは世間一般の中の話というより、カラマーゾフ家の男性に流れる性質に向けてのようですが、こんな表現がありました。
  “虫けらには、好色を!”
長男ドミートリーがシラーの『歓喜に寄せて』の中の『喜びの歌』を朗誦しますが、ほんの1部分抜き出すと、


  恵みゆたかな自然の懐で
  息づくものすべてが歓びを呑む
  生きとし生けるもの、すべての民を
  この歓びが引き寄せる
  不幸な日には友を
  ぶどうの露を、美神の冠を与え、
  虫けらには好色をさずけ・・・・・
  こうして天使は神の前に立つ


自分はまさにこの虫けらなんだとドミートリーは言い、またカラマーゾフ家の全員が(天使のような三男のアリョーシャですら)神様から好色をさずかった虫けらだったんだ、とも。


言葉一つ一つを拾い上げながら、考えながら読まないとわかりにくい事が多いです。
前回、予告していた女性達のことに話を移しますが、上にも書きましたドミートリーの婚約者として登場するのは、カテリーナです。そして、婚約者がいるのに惚れてしまった相手は、グルーシャニカという女性。
カテリーナは、美しくプライドの高い、威圧的な娘(三男アリョーシャの持った印象)
グルーシェニカは、どんな男からもはげしく愛されてやまないロシア美人。イワンの言葉では、「ケダモノ」と表現されているが、アリョーシャの印象では、人の心をうきうきさせる何かのある女性とも。だだし、甘ったるい話し方をするのは残念な思いだ。(p.401)
こんな風に描かれていました。


カテリーナには、イワンが思いを馳せており、グルーシェニカには、ドミートリーだけでなく父フョードルも思いを寄せていて・・・。と複雑に絡まりあっています。
もうひとり注目するのは、リーズというアリョーシャの幼なじみの若い女性です。3編の最後あたりですがアリョーシャにラブレターを渡します。ここまでの話の中ではそれほど登場しないのですが、アリョーシャをからかってみたりする姿が小悪魔的な感じもします。これからどう発展していくのでしょう。


1度読むだけではなかなかお伝えしきれませんが、覚え書きとして書きとめておくことにします。次回から、第2部へと移ります。