カラマーゾフの兄弟(10)

すこし中断していましたが、「第3部 第7編 アリョーシャ」のことを書いてみます。

カラマーゾフの兄弟3 (光文社古典新訳文庫)

カラマーゾフの兄弟3 (光文社古典新訳文庫)

ここで語られる話の大きな部分に、尊敬するゾシマ長老が亡くなられた後の「亡骸(なきがら)」にまつわること、腐臭がしたことで、聖人であるという証がくずれさるような感じです。・・・静かながらもこのことが騒ぎをひきおこします。アリョーシャもゾシマ長老への尊敬の気持が、このことに影響され大きく揺らぎます。
聖人であれば奇跡が起るだろうとの大きな期待と、それが叶わないとなると反対に大きな失望や非難の言葉や気持に包まれる。
普通の人だったら死後に「腐臭」がしようと、きっと話題に上らないかもしれないのに・・・。


アリョーシャは自分の心の動揺、「ゾシマ長老は偉大な人ではなかったのだろうか。」などと疑う気持を持つ、自分自身に対する恥ずかしい気持もあったのでしょうか? 
やけになった気持ちもあり、人間の邪悪な心をみつけるためにグルーシェニカのもとを誘われるままに訪れます。
どんな男性をも虜にするような女性の前に、アリョーシャはどうなってしまうのでしょう。
しかしながら、アリョーシャはグルーシェニカから予想していた邪悪な心ではなく、その底に誠実な心を感じとり、心を動かされます。
グルーシェニカとの場面や、ゾシマ長老がアリョーシャの夢の中に現れたことでの歓喜に満たされる場面などがあり、ひとまわり大きくなっていくという、アリョーシャにとっての大事な場面でした。


きょうは、このへんで。